BIツールとは、企業や組織が持つさまざまなデータを分析・可視化し、経営や業務上の意思決定を支援するためのソフトウェアです。
BIツール導入には以下のようなメリットがあります。
・感覚ではなくデータに基づく意思決定を行える
・リアルタイムで最新データの把握ができる
・複数システムからデータを統合し一元管理ができる
・簡単なUI操作から非エンジニアでも扱える
これだけ見るとDX推進のためにBIツールの導入は良いことづくめな気がします。
しかしこれらのメリットは、既存データの状況とBIツールの性質を正しく把握しなければ決して発揮されることはありません。
この記事では、いちエンジニアがBIツールを用いたアプリ開発を行った経験から、BIツールを導入する際に心がけたい点を書いていきます。
企業や組織は何らかの方法により意思決定を行っているわけですが、昨今ではデータに基づく客観的なファクトが重視されがちです。
しかし、長年の経験に裏打ちされた主観的な感覚も、決して蔑ろにすべきものではありません。
組織を取り巻く状況の全てがデータとして正確に抽出されているわけではないので、限られたデータだけに頼ることでむしろ視野狭窄に陥り、意思決定が鈍る可能性も十分に考えられます。
よって「データに基づいているから大丈夫」と安易に思考停止しないことを心がけるべきです。
BIツール上では常に最新データが確認できると思われがちですが、実際はそうではありません。
最新データは無から突然生まれてくるわけでなく、個々の部署から収集されるものです。
各部署がデータをアップロードしなければ、BIツール上に最新データは反映されません。
よってリアルタイムで最新データを把握するためには、各部署が指定の期日までに指定のフォーマットで指定の場所にデータをアップロードしなければならないのです。
別の業務もあるなかでこのタスクを課すのは重荷になります。
データ収集を周知するのは大変なことで、工夫が必要になるといえます。
BIツールにはファイルサーバやデータベースからデータを取り込んで統合する機能があります。
ただしこれにはファイルやデータが予め統合用に加工されているという条件がつきます。
まったくバラバラの形式のデータをBIツール内で統合するには限界があるので、その場合はBIツール以前にデータ統合システムを開発する必要があります。
それに費やすコストも考慮しなければなりません。
BIツールは直感的で分かりやすい操作によって、習熟度の低い人でも扱うことができます。
ただしこれにも限度があり、あまりに複雑なUIであれば操作手順書がなければ扱えません。
簡単なUIであれば操作は楽ですが、画面上で把握できる情報量に制約が発生します。
BIツール導入にあたっては、そのBIで何をしたいのかという目的を定めることが大切です。
BIはデータを取り込むだけで簡単に開発ができるので、ともすればいくらでも機能を追加できてしまいます。
しかし過剰な機能はUIの視認性と操作性を低下させます。
また、何が重要な情報であり何がそうでないのかが分からないと、アプリを見る必然性が薄れて誰も見ない無用の長物になってしまいます。
BIツールの導入にあたっては「できるから」といった安易な意識は捨て、目的を明確に絞りこむことが重要です。
存在しないデータからは何も生み出せませんし、汚いデータからは正確な情報を読み取れません(Garbage in, garbage out)。
BIツール上で把握したいことがあったとしても、その元となるデータの状況が悪ければ実現不能です。
元データの状況を確認し、それが存在するか、定期的に更新されるか、中身がぐちゃぐちゃでないか、多少形式が汚いのなら加工して何とかなるかを判断しなければなりません。
データ状況的に実現不能であれば、その機能は削減するといった判断が必要になります。
どうしても欲しい機能があり、無理をしてデータを収集したとしても、そのデータがどの程度正確かは厳密に精査しなければなりません。
正確なデータと不正確なデータが混在するようではデータ全体の信頼性が低下し、アプリが見られなくなるというリスクがあるからです。
まとめると、BIツール導入の際に意識すべきことは「実現したいこと」かつ「実現できること」を常に明確にし、そこに注力することであると言えます。
BIツールの導入にあたっては「何がしたいか」と「何ができるか」を明確にしなければなりません。
何がしたいかはエンドユーザ側に徹底したヒアリングを行うことで把握します。
何ができるかは既存システムの状況やデータ収集状況、データの中身を確認することで把握します。
BIツールの開発者には、両者との緊密なコミュニケーションを怠らずに継続することが求められます。
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